ポールポジションから好ダッシュを見せた辻村猛がホールショットを決め、ハイペースでレースをリードしていく。オープニングラップは、辻村、酒井大作、手島雄介、小林龍太、安田毅史、奥野正雄の順で通過していった。2周目に入り辻村と酒井の二人がテールtoノーズの争いを展開。続いて3番手ポジションをシリーズタイトルを争う手島と安田が、そして5番手ポジションを小林と予選2番手グリッドからスタートした稲垣誠が争っていた。トップを争う二人は3周目以降1分56秒台にタイムを入れ、早々とペースアップ。また、手島と安田に追いついた稲垣ら3人の3番手争いも熾烈を極め、シリーズチャンピオン争いの行方も全く予想のつかない戦いが繰り広げられていた。
ところが5周目の90度コーナーで酒井が痛恨の転倒してしまいリタイア。これで単独走行となった辻村は、ゴールまでトップを独走することになる。一方、2番手争いとなった手島、安田、稲垣の三つ巴のバトルが動きを見せる。5周目のS字コーナー進入で安田が手島をかわして2番手に上がるが、V字コーナーの進入でギアをニュートラルに入れてしまい、手島と稲垣にかわされ安田は4番手に下がってしまう。安田は、このポジションでもタイトル獲得となるが、続く6周目のヘアピンで稲垣をかわし、再び手島のテールをマークすると、8周目のS字コーナー進入で手島をかわす。手島は、この辺りからマシンのチャタリングが解消してきたことから、9周目のV字コーナーで安田をかわすと、次々に自己ベストを更新する走りで安田をジリジリと引き離していく。トップを行く辻村は、すでに約6秒という圧倒的な差をつけてレースをリード。手島も単独走行となっていき、安田は稲垣の追撃を抑える。辻村、手島、安田のチャンピオンをかけた意地と意地のぶつかり合いが最終戦を盛り上げていった。
そして迎えた最終ラップ。辻村は最後までペースを緩める事はなく独走で勝利のチェッカーをくぐった。手島が単独走行で2位に入賞。そして安田が3位に入賞し、初の全日本タイトル獲得が決定した。4位に稲垣、5位に徳留和樹、6位に大崎誠之が入賞した。
辻村と手島はチームメイトだったため、チームオーダーの如何によっては、手島がチャンピオンとなる可能性もあった。しかし、彼らが所属するTSRにはチームオーダーは一切存在せず、ライダーそれぞれが自分の力を最大限発揮したフェアなレース展開で、ST600のチャンピオン争いが繰り広げられた。
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