新しいシーズンが茨城県・筑波サーキットで始まった。未曾有の不況の影響から国内最高峰JSB1000クラスの参加台数は減ったものの、そのレベルは落ちるどころか、さらに上がっている。ディフェンディングチャンピオンの中須賀克行は事前テストで、これまでのコースレコードを上回る55秒5をマークし、ライバルに強烈なインパクトを与えた。中須賀が駆るヤマハYZF-R1は、今シーズン、フルモデルチェンジして登場。クロスプレーン型クランクシャフトなどMotoGPマシンのテクノロジーを数多く採用しており、そのエンジンからはMotoGPマシンのような図太いサウンドが奏でられる。公式予選では、中須賀がどんなタイムを出すのか注目が集まった。
木曜日から始まったレースウイークは、すべてドライコンディションで行われ、各ライダーはセットアップに集中。土曜日の公式予選は1時間1セッションで行われた。真っ先に55秒台に入れてきたのはハルク・プロの山口辰也、これに亀谷長純、伊藤真一と続く。その直後に亀谷がさらにタイムを削り55秒576をマーク。このタイムがセッション終盤まで破られることはなかった。残り5分となったところでリーダーボードのゼッケンが入れ替わる。ゼッケン33伊藤がトップに立ったのだ。タイムは55秒142という驚異的なレコードタイム。これまでのコースレコードが、一昨年に秋吉耕佑が記録した56秒140だっただけに大幅なブレイクとなった。文句なしのポールポジションだったがKeihin Kohara R.T.の小原斉代表曰く、想定タイムは54秒台だったと言う。「レースウイークに入ってから思いのほか車体が決まらなくてドタバタしてしまった。2週間前のテストの感触では54秒台が出ると思っていたし、周りが(タイムが)出なかっただけ」と想定内のタイムに届かなかったと小原代表は語る。伊藤も「QF(予選)タイヤを使ったし、マシンも本来のパフォーマンスは、もっと上。54秒台を出したかった」と悔やむ。しかし、「セッティングしながら、最後に1度だけのアタックだったので、まぁよしとしておきます。いいアベレージで走れれば勝てるはず」と自信のコメント。
伊藤に逆転されたものの2番手となった亀谷も事前テスト、レースウイークを通してノレている。「決勝用タイヤで、いい状態のときにベストタイムを出すことができた。ずっとレースを想定してタイヤが摩耗してきた状態でも56秒台で走れるセットになっている。とにかく序盤からイキますよ!」とスタートダッシュを狙う。
3番手には、やはりQFタイヤを使った酒井大作が入りフロントロウを獲得。「ソフトタイヤを履いても、あまりタイムは変わらない状態。バイクが新しいので、やることが多いけれど、何とかマシンもまとまってきている」とフルモデルチェンジしたヨシムラGSX-R1000をフロントロウに並べた。
一方、伊藤とポールポジションを争うと見られていた中須賀は「予選よりも、とにかく決勝が重要ですからね。エンジンブレーキのセットもよくなってきたし、調子はいいですよ。スタートに集中して前に出て行きたいですね」とあくまでもレースを見据える。
ブリヂストンとダンロップのタイヤ特性の違いもあるが、亀谷、中須賀がスタートダッシュを狙っている。これに伊藤、酒井が、どうついていけるか? また4番手につけた山口辰也もアベレージでは負けていない。横江竜司、大崎誠之、柳川明も混戦になれば勝機が見えてくるかもしれない。いずれにせよ激しいトップ争いになる確率は高いと言える。序盤の駆け引き、終盤の勝負所に注目だ!
また、トリック★スターより5年振りに全日本JSB1000クラスに帰ってきた井筒仁康だったが、金曜日にMCコーナー立ち上がりでハイサイドで転倒、左鎖骨を骨折してしまい残念ながら欠場を余儀なくされている。。 |