オートポリスでは初めてノックアウト方式で行われたJSB1000クラスの公式予選。ハルク・プロの山口辰也が、すべてのセッションでトップタイムをマーク、今回は完全に支配下に置いていると言っても過言ではない。特に第2ヘアピン後の最終セクションのコーナリングスピードは“圧巻”のひとこと。とにかくノレているのだ。5月12日(火)〜14日(木)に行われた事前テストでは、気温も上がり、路面温度は約50度もあるコンディション。土曜日の公式予選は、路面温度は30度と打って変わっていた。他のライバルがタイムを縮めることができずにいる中、山口だけがコースレコードを更新する1分49秒714をQ3でマーク。そのQ3も赤旗中断があり、残り8分30秒で再開されてから記録されたものだった。「今回は走り始めからマシンがすごくいい。今年ハルク・プロに戻ってきて感じたのがチーム力の高さ。本田監督、チーフメカニックの堀尾さんと意見を重ねて、着実にレベルを上げていけていることだね。だから、金曜日からいいタイムを出せるんだと思う」と山口。
一方、ディフェンディングチャンピオンの中須賀克行は、このコンディションに翻弄されてしまう。「事前テストと違うコンディションに合わせきれませんでした。作戦は全くないですね。2列目は想定内なのでスタートを決めて、(山口の)前に出て全力でいくだけですね」と中須賀。事前テストでは中須賀も非公式ながらコースレコードを破っているだけに、決勝のコンディションとのマッチングによっては十分、山口に対抗できるはずだ。
山口と同じ、CBR1000RRを駆る伊藤真一も虎視眈々と優勝を狙っている。「第2戦鈴鹿の状況と比べれば、かなりまとまっている。まだ仕上がり的には7、8割と言ったところだけれど、レースは何とかトップについていって、最後に勝負したいね」と伊藤。
3番手につけている酒井大作は「予選はいま一つ攻めきれなかった。ただ課題は見えてきているので、決勝朝のウォームアップでセッティングを詰めて勝負したいね」とコメント。今シーズンからフルモデルチェンジして登場したGSX-R1000K9だが、なかなか思うように仕上がっていないようだ。
そしてオートポリスと言えばカワサキのホームコース。エースライダーの柳川明も九州出身だけに燃えている。毎年、表彰台に上がるものの、あと一歩、優勝に届かないレースが続いているだけに“今年こそ”の思いは強いだろう。「今年になって抱えている問題が、なかなか直らない。それが直れば49秒台も出ると思うんだけどね(笑)。ただ、その中でもアベレージは上がってきているし、オートポリスは応援してくれる人も多いので、そろそろいい思いをしたいよね」とオートポリス初優勝に向けて気合いを入れている。
同じく九州出身の大崎誠之は予選中にマシントラブルが発生し、不完全燃焼だったが、決勝に向けては明るい兆しだという。「アベレージも上がってきているし、気に入っているマシンも直るのでトップ争いに食らいついていきたい」と大崎。
山口がスタートで前に出ることができれば、そのまま逃げる可能性が高いと言える。スタートダッシュに定評のある中須賀が、山口の前に出て抑えることができれば、伊藤、酒井、柳川、大崎によるトップグループが形成されるはずだ。 |